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2017年12月 7日 (木)

「富野由悠季全仕事1964-1999(キネマ旬報社)」を読む。

最近、会社に行って「今日はやらなきゃいけないことがあんまり無いし、やる気が無いし、だりーなー」とか思っていると、なぜか夕方頃には「急がないと終わらねー」とか言いながら仕事してるし。なぜか、やろうと思っていたことが終わってないし(笑)。

「富野由悠季全仕事1964-1999(キネマ旬報社)」を読む。
我々、1980年代にアニメばっかり見て育った子供にとって「富野由悠季」という名はアニメを飛躍的に高度化させた神様のように手の届かないところにいる偉い人であると同時に、悪魔のようにろくでもない話(ラストで全員死んじゃったり、延々とフェチなエロ描写ばかりの小説だったり)ばかり作る極悪人である。愛憎入り混じる、という言葉があるけど、このひとほど「どう評価していいのかわからない」人もいないと思う。多くの人に愛情を込めて「禿げ」と呼ばれるこの大御所であるが、しばらく作品を見ていないと無性に見たくなるし(ちなみに今はダンバインを見たい)。偉そうなんだか腰が低いんだか良くわからない「トミノ節」が聞きたくなる。
そんなわけで、ちょいとネットで調べたら、この本が面白いというので買ってみた。ノンブルは434頁まで。その大半が富野監督のインタビューで構成されている。あとの1/4くらいが他のクリエイター(主に一緒に仕事していた人)のコメントやインタビュー。残りが作品の評論など。ちなみに「踊る大捜査線THE MOVIE」の監督とか読んできて対談を載せるのはキネ旬的だと思いましたが。個人的には流れに沿っていないので、こういう濃いムックではなく、本誌の方でやればいいのに、と思いましたが。
となみに、この本はターンAガンダムの放送開始の頃の本なので、その頃までの仕事の総まとめ的な物になっています。

ということですが、ともかく濃い。各作品のムックや雑誌での監督のインタビューは結構読んでいますが。それを越えて、新たに得られる情報も少なくないです。基本的に富野氏はリップサービス的な物があるので、インタビュアーが誘導すると乗っかっちゃう時があるような気がします。ゆえに、インタビュアーがザブングルを最初に否定したので、この本の中ではザブングルについてあまり触れられていません。ザブングルをやったスタッフや声優さんの間では、非常に受けがいいのに。
面白いと思ったのはイデオンについて、ロボットデザインが酷かったからああいう大きな話にした、というのがこれまでの語り口であり、今回もそうでしたが。その中でぽろっと「実写映画をやりたかったから、映画業界から注目されるように大きな話にした」というような意味のことが漏れ出てきたりするのですよ。これ、作品としては偉い悲劇ですし、それで映画界からお呼びが掛からなかったのが一番ショックだったようです>松竹との繋がりも出来たのに、なぜ、自分から打って出ない?>シャイなために、自分からは出来ないようだ。さすらいのコンテマンも呼んで貰えないと仕事が出来なかったみたいだし。
イデオンのデザインは最初、消防車とかのレスキュー車輌が合体するもの(勇者シリーズ的な企画)だったというので、富野氏が関わることになった時にどこまで今のイデオンに近いデザインだったのか分かりませんが。あれを第六文明人の遺跡にしたり。バック・フラン側のメカを「ガンプラに乗ってきた若者からの流れを取り込むためにああいったデザインにした」と言ってみたり(ガンプラのヒットはそのミリタリー的な魅力がスケールものをやっていた人たちに受けたのであって、異星人のビックリドッキリメカが受けるとは思えないのだが、本気で言っているのか?まして、アオシマがガンプラを意識して1/600シリーズを展開したのは映画の頃であり、テレビの頃は親子マシーンとか300円の箱スケールで売っていたのだが)。

Vガンダムのバイク戦艦のせいで病気になったとずっと言い続けていましたが、このインタビューではガンダムを潰すつもりで採用したと言っています。Vガンダムでガンダムを潰そうとしたのか、自分が潰れていたのか。本当のところは分かりません。

他にも、気になることは多いですし。評論もかなり深いところを突いていますし。安彦良和さんのインタビューは唯一、批判の方が多い感じになっていますが、「手塚治虫に対して苦言をいう宮崎駿」みたいで、非常に面白いですし。富野監督の言っていることと、第三者視点で見る富野監督の姿とのギャップも面白いです。

ただ、こういった富野監督の本を読んでいて不思議に思うのは。なぜか人間爆弾とホロコーストを結びつける論説が無いと言うことですか。あのエピソードは「難民キャンプでシャワールームに行くと、謎のガスが出てきて改造される」という、どう見ても当時の地域紛争における難民キャンプの描写とホロコーストのガス室(これもシャワールームに擬装されていた)をそのまま使った物なのに。その事実自体が商業誌に載せるにはやばすぎるのか、誰も突っ込みません。
他にも、ダンバインの昆虫的な容姿は早すぎたデザインであり、ヒーロー的ではないという解説とか読み飽きましたが。当時の子供からすると「子供に大人気のカブトムシモチーフとは、ガンダムよりも子供っぽいな」という真逆の評価でしたが。ちなみに、これを「仮面ライダー的」と評したサンライズの飯塚氏の言葉が一番的を射ていると思ったり。読んでいてもさっぱり分からないこととして、エルガイムのストーリーラインについて、富野氏は「永野氏に触らせなかった」と言っており、基本的に渡邊由自氏がシナリオライターとしてストーリーラインを引いているはずなのに、なぜ、永野氏の作品になってしまったのかとか。
ともかく、この本1冊に膨大な情報が詰め込まれていて。ここ2週間、ちょっとずつ読んでいましたが。思うところがグルグルしてしまって、こうして書いていても実に消化不良なところがあります。

ともあれ、富野由悠季という名前に魂を引かれる人なら、一読の価値はあるというか。これを読むのに掛かる時間と得られる情報の量、質を考えると、価格以上に価値はあるかと。
ただ、手放したトミノ小説を、また読みたくなったりするのは苦行だよなーと思う(笑)。

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